クライマー移住を考える。─瑞牆・小川山編─

まさにクライマーの桃源郷

「土曜の朝イチで岩に着いてアップして、昼には撤収。もっと岩の近くで暮らせたら──」 そんなクライマーの夢は、今や現実にできる時代になった。

瑞牆山と小川山、日本屈指の花崗岩エリア。 全国のクライマーが“巡礼”のように通うこの地に、住んでしまうという選択肢を本気で考える。

本稿では、瑞牆・小川山周辺(山梨県北杜市〜長野県川上村)への移住を、ライフステージ別に徹底考察。クライマー視点で「登るように暮らす」ためのリアルな情報を届ける。


目次

ライフステージ別・移住シミュレーション

◆ 単身クライマー(20〜40代前半)

▷ 地域環境

  • 拠点におすすめなのは北杜市長坂町・小淵沢・白州。中央本線の駅があり、生活インフラも最低限確保。
  • 小川山の玄関口川上村は岩に近いが、冬季の交通事情は要注意。車+スタッドレスはマスト装備。

▷ クライミングライフ

  • 朝起きて天気を確認し、そのまま瑞牆の岩に。1トライして、午後はカフェでPC作業…そんな“登って暮らす”スタイルが現実に。
  • 外岩だけでなく、甲府・韮崎方面のジムも車圏内で、トレーニング環境もそこそこ整っている。

▷ 生活コスト

  • アパート(1K〜2DK):3.5〜5.5万円
  • 古民家(築年数あり):4〜6万円前後(DIY可)
  • 水道代:月1,500〜2,500円
  • ガソリン代は月1万円〜が目安(移動中心)

▷ 働き方

  • リモートワークができるなら理想。
  • 現地では農業、林業、飲食、観光、介護などローカルワークも選択肢に。
  • 季節バイト:夏は高原野菜、秋は観光、冬は除雪や製造系も。

▷ 地域交流

  • 北杜市は移住者が多く、価値観が多様。気の合う仲間を見つけやすい。
  • 川上村はやや保守的だが、誠実な姿勢と地元への敬意を示せば歓迎されやすい。

▷ 懸念点

  • 雪道運転、孤独、買い物の不便さ。便利さを削って岩に近づく覚悟が必要。

◆ 夫婦/パートナーと2人暮らし

▷ 暮らしの質

  • 小淵沢〜白州あたりはカフェや直売所、温泉が点在。観光地感が強く、雰囲気が柔らかい。
  • 2人でのスローライフ志向なら“暮らして楽しい”田舎度。

▷ 家・物件

  • 2DK〜3LDKの戸建て賃貸:6〜8万円前後。
  • 空き家バンク経由ならさらに安価+DIY可。

▷ 仕事・副業

  • 地元の自然食レストランやオーガニックショップで働く人も多い。
  • 自営(クラフト・ネットショップ)と登りを両立している移住者も。

▷ 地域交流

  • マルシェ、ワークショップ、地元イベントが豊富。
  • 「よそ者だけど馴染める」空気感が北杜にはある。

▷ 懸念点

  • 車がないと詰む。病院・スーパーは基本遠い。
  • 若者向けカルチャーは少ない(が、登っていれば関係ない)。

◆ 小さな子どもを育てる世帯

▷ 子育て環境

  • 保育園の待機児童ゼロ。自然教育・森のようちえん系も豊富。
  • 地元の小学校は自然学習や地域行事に力を入れており、少人数で手厚い教育が可能。
  • 塩川病院(北杜市)、韮崎・甲府方面の総合病院もアクセス可能圏。

▷ 支援制度

  • 医療費助成、給食費補助、第2子以降の保育料減免など、子育て支援は手厚い。
  • 北杜市の移住支援金制度(最大100万円超)も活用可能。

▷ 自然と遊ぶ

  • 川・森・雪・焚き火…自然が“生活の延長”としてある。放課後が冒険。
  • 親が登っている間に、子どもは岩陰で石集めや虫捕り──そんな風景が本当にある。

▷ 懸念点

  • 教育の選択肢(中学受験・塾など)が限られ、都市志向の家庭には不向き。
  • 冬場の通園・通学は雪と凍結で注意。

◆ 子育てが終わった50代〜リタイア世代

▷ 暮らし方

  • 空き家を安価で購入し、自分で直して薪ストーブを入れる。
  • 野菜を育て、たまに登り、春は山菜、秋は薪割り。そんな「山の暮らし」が現実に。

▷ 地域との関わり

  • 農業ボランティア、山岳会、里山保全団体など多様な参加口あり。
  • 年齢と共に「土地の人から信頼されやすくなる」傾向もある。

▷ 医療・老後

  • 健康で動けるうちは天国だが、要介護以降のフェーズは要計画
  • 最寄りの病院まで車30分圏内ということも多いため、老後も自立した生活が前提。

結論:「登るように暮らす」なら、ここしかない

瑞牆・小川山周辺は、クライミングだけでなく「生き方の自由度」が高い土地だ。 自然と街、孤独とコミュニティ、静けさと情熱──その全部が“近接”している。

岩に近づくということは、人生を岩に合わせて組み直すということ。

朝、鳥の声で目を覚まし、霧の岩を眺めてコーヒーを淹れ、昼には核心に挑み、夜は焚き火で反省会──そんな日々が現実になる。

登るように暮らす。暮らすように登る。
その両立を、本気で実現できる場所が、ここにはある。

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