短編小説– category –
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【ポエム】レインマン 〜雨の日だけの恋〜
第一章 「レインマン」 彼は、雨の日にだけ現れる。 「今日は会える?」 曇り予報の朝、そっとLINEを送る。 午後になって小雨が降ると、既読がついて、 「今どこ?」って返ってくる。 好きだなって思った。 ちゃんと、来てくれるところ。 ちゃんと、笑っ... -
【小説】「After break」〜破壊(チッピング)と創造〜
第一章 「空観」 夜明け前の森は、まだ息を潜めていた。 薄墨色の霧の中、ひとりの男が岩の下に立つ。 胸まで伸びる古いロープの痕が、肩の筋肉をさらに浮き立たせていた。 その名は 一条 誠(いちじょう・まこと)。 日本初のV15を切り開き、その後... -
【小説】「たった一件のいいね」
第1話『岩を登らない奴はゴミ』 日常をこなしながら、頭の中は岩場のことばかり。 社会のルールに適応するふりをして、本当はすべてを嘲笑っていた。 そんなヤスが、ある金曜の夜、ひとりの少女と出会う。 29歳、神奈川の会社員 名ばかりの正社員、土日祝... -
「虚栄のホールド」 偽りのV17クライマー
第1章 到達と偽り 空気が、重かった。 ケンジはフィンランドの奥地、苔むした巨岩の前に立っていた。 名もなき森にひっそりと横たわるその岩は、 太陽にほとんど照らされることもなく、ただ黙って、在り続けている。 Vili Mäkkanen(ヴィリ・マッカネン)...
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